山の人工林と過疎化の課題への対策

 手入れがされなくなり、荒れている人工林が増えています。このまま、荒廃が進めば土砂災害の危険が高まります。道路や民家への被害が懸念されます。流出した土砂や流木はダムの機能を低下せます。ダムの堆砂が進むと飲料水だけでなく農業用水、工業用水の枯渇につながります。流木の処理は数億かかり、財政を圧迫させます。
 一方、今でも天竜杉の評価は高く、天竜美林のブランド力があります。付加価値を高める先進的な取り組みも行われています。人工林を徹底的に使うカスケード利用をすすめ、木材生産だけでなく、枝葉のチップ化やバーク堆肥化、製材の端材の利用、小径木を使ったこどもの家のキット、スギやヒノキのアロマ製造などを進めます。
 また、林道脇では苗木やコケの採集ができ、これを庭づくりや盆栽、寄せ植えに使うことができます。つる植物や木の実などはアレンジ素材にすることができます。こうして、エコツーリズムも含め「森の宝物」を商品化することで山村へ還元することができるようになります。まちとやまの縁をつくることで、交流人口や定住人口を増やしていきます。


里山の課題への対策

 昭和初期からはじまる石油による燃料革命によって薪の暮らしが消えていきました。それまではコナラは薪や炭になり、暮らしに欠かせない燃料でしたが、その頃から里の家の森は放置されるようになったと思われます。コナラ林だった森はやがて常緑のシイノキが大きくなり、コナラは枯れていきました。赤松もありましたが、やはり陽が当たらなくなり、枯れていきました。シイノキの枝葉はマントのように森を覆いかぶさり、下草もなくなりました。
 こうした燃料の他、木の実やビワの葉のように薬、染料、蚕のための桑なども里山から頂いていました。里山を再生させるためには、里山が必要な暮らしも再生する必要があります。自然学校のプログラムだけでなく、ここでの暮らしを薪の生活へシフトしていくことが、里山をつくり守ることになると考えています。
 フォレスト・ガーデンは、パーマカルチャーのひとつの分野で、循環型の農的ガーデニングと言えます。森の実りを得るためのガーデナーです。もともと里山は、暮らしに必要な糧を得るという点で、すでにフォレスト・ガーデンと言えます。どのような植生にすれば、効率的で生産的なのか、縄文時代から続く知恵もかつてはあったと思います。その知恵は造林や園芸を行う庭師に引き継がれているのではないかと考えています。
 ここでは、かつての里山の知恵とフォレスト・ガーデンの理論を融合させ、里山ガーデンとしていきたいと考えています。


街の課題への対策

 名古屋で都市計画の仕事をしている時、江戸時代の町割り図を見たことがあります。そこで初めて「会所」の存在を知りました。会所は50間四方(1間(けん)≒1.818m)の区画の中に広場のように空いた空間です。寄合や取引の場所として使われた公共空間でした。
 国立社会保障・人口問題研究所によると、平成25(2013)年3月27日の公表資料で、2040年の東京都の人口は約1230万人、2010年の1315万人から、85万人が減少しています。一方、75歳以上の高齢者は、123万人から214万人へと増えています。
 こうした社会変化と共に都市住宅のあり方が問われています。老朽化した住宅密集地域での共同建て替えの際、会所のようなオープンスペースを設けることで、身近な自然とコミュニティを取り戻すことができると考えいます。屋上緑化もひとつの方法だと思います。
 会所は畑や果実、薬草、薪になる木などを中心としたガーデンとし、災害時の避難場所としての機能も付加させることができます。こうした小さな里山ガーデンが点在するようになれば、生き物たちが帰ってきます。里山ガーデンプロジェクトは、都市の再生に、里山のような自然の循環を取り込むことで、豊かな暮らしを提供する取り組みです。

やまを再生する

人工林の手入れをして、森の恵みを頂く


天竜の森は人工林が多く、近年、手入れがなされずに荒れている森が増えてきました。一方、手入れの行き届いた森は人工林でも豊かな多様性があります。苗木やリースづくりの材料などがたくさんあります。フランスなどで人気の高い盆栽に使えるコケ類も多くあります。スギのアロマはシックハウスの効果があります。人工林に自生するクロモジからは高価なアロマが採れます。間伐材は、製材の端材や塀やプランター、野鳥の巣箱になります。樹皮はチップやバーク堆肥になります。森林浴効果のあるフィトンチッドは、針葉樹の森に多く、気持ちのいい散策ができます。ボランティアでもできる森林整備でこうした森を広げます。

(画像は天竜の林業家の森での体験と森の宝物)

くんま、佐久間、滝沢などの森で年に数回、実施しています。

さとやまを取り戻す

多様な生き物たちが息づく楽しい森づくり


本来の里山は徹底的に利用され、禿げ山のようだったといいます。茅葺きのための萱場、牛や馬のための草場、炭や薪にする薪炭林などがありました。畑に鋤き込む腐葉土、ザルなどの日用品をつくるための竹林、薬用のためのビワ、草木染めに使う植物、お茶の木などが植えられた多様な森でした。森遊びや憩いの場所としてだけではなく、薪・炭・ほだ木・薬草・染料・アロマなど暮らしに必要な「用の里山」として里山を蘇らさせていきます。貧栄養の山には、アカマツが育ちました。松葉も畑に鋤き込んでいたので、アカマツの里山にどんどん人が入ると根っこが踏まれ、傷がつき、松茸の菌が入り込みます。将来的に松茸を復活させたいと考えてます。

(田畑と森のある風景とビワの葉エキスづくり)

2014年から2016年の3年計画で、里の森の整備を進めています。

まちの里山をつくる

ひとが集う緑のオープンスペースづくり


コミュニティガーデンの取り組みが先進国で進められ、日本でも注目されるようになりました。日本でも地域コミュニティとしての広場が求められています。人工林の間伐材や製材の端材を利用したガーデンファニチャーやこどもの家(フィンランドのレイキモッキ)、里山の樹々を移植したりどんぐりを植え、畑をつくるなどして、まちに生き物が集まる里山のような自然を取り戻します。里山恵みを頂く体験をします。人工林の間伐やリースづくり、里山でのどんぐり拾いなどを通じたエコツーリズムで山と里と街をつなぎます。緑には人を引きつける魅力があり、まちのオープンスペースとして、コミュニティの醸成に役立ちます。

(植樹して8年目で森に)

2012年度は都田の畑と浜北のスマイルベリーファームで里山ガーデンづくりをしました。2014年から2015年にかけて、市内2カ所の保育園の園庭で取り組みます。

保育園での取り組み


2014年11月22日、聖隷こども園の里山ガーデンづくりのための第一歩、佐久間の森での森林体験をしました。
ツリーハウスなどの材料になるヒノキの皮むき間伐、土が流れないようにする枯れ枝集め、苗木とり、森遊びなど、
充実した一日を過ごしました。
苗木は来年、3月の卒園記念植樹で植樹とどんぐりを園庭に植えます。

里の家の取り組み

2013年


常緑の巨木を10本伐採しました

ツリーハウスりデッキ部分と基礎部分

伐採した木の枝や、枯れ木は薪に

落ち葉を畑に鋤き込こんで肥料に

2014年


放置されていた茶畑の真竹を伐採

アケビなどの有用植物集め

ヤマグワの木を合計12本植樹

ニホンミツバチの巣箱を設置

・伐採したシイノキなどの処理
薪にするための薪割り、枝はツクテの土留めにします。細いものは薪に使いっています。
・伐採した竹の処理とチップ化
大量の竹は、はざかけや風除けに使い、枝はガーデンシュレッダーでチップ化し、散歩道に敷きます。竹の伐採地は、一部残し、自生していたチャノキを整えて自然樹形のお茶園、クヌギを植えました。
・コナラの保護
陽が当たるようになり、コナラの芽吹きが多く、これらを踏まないよう保護しています。

2015年

4月 山採り苗のクロモジ5本を森に植樹
5月 ブリーベリー12本を植樹
6月〜11月 真竹の伐採・片付け
1月 ミツバチのためにボリジを定植
2月 クリ2本、イチジク3本を果樹園に植樹
3月 渋柿2本を里の家の畑に植樹

2016年

4月 コナラの苗3本、温州みかん3本、渋柿2本を里の家の畑に植樹

2017年

森の遊び場に竹の滑り台を設置。果樹園の風避けを設置。落ち葉堆肥場を整備。

2018年

ミツマタ50本をを植樹。倒木防止のため樹齢120年の二本の杉を伐採。藤棚を設置。

2019年

森の遊び場で森のトンネルづくり。新しい作業路、散策路を整備。ベジプランターガーデンを整備。薪ストーブ用の薪棚を整備。ウエルカムガーデンを整備。びわ4本を移植。森の作業路・スローブを整備。ビオトープを整備。ぶどう棚を設置。

2020年

薬草園を整備し、10数種の薬草・ハーブを定植。コウゾ20本を植樹。古屋を解体、落ち葉堆肥場、畑を増設。森の散策路にガードを設置。